マテオチャンスを知った時、DAVE MATEOはもういなかった

けん玉にまつわるもろもろをなんとか言葉で伝えようとするブログです

僕が観たけん玉ワールドカップは画面の中 ~KWC2021観戦記~

けん玉ワールドカップ2021が終わった。
僕がリアルタイムで観た二度目のワールドカップが。

観てない人はとりあえずこのページをさっさと閉じて今すぐYouTubeへ。
(観終わったら帰ってきてください…)

準決勝ぐらいから観るのが1番オススメだけど、時間がないなら決勝だけでも観て欲しい。

マジすごかった。3日経ってもまだあの時の熱が残ってる気がする。

すごすぎてロクな言葉が出てこねぇ…
上位4人の異次元さにぶっ壊れて四散した言語中枢を拾い集めつつ、記憶が鮮明なうちに記録として個人的な感想を残していこうと思う。


まずは来たね大本命。そして予想が当たった!若干11才、KROMのヤスくんが史上最年少初優勝!!

ここ数ヶ月の彼の活躍を思えば予想なんて言うのもおこがましいぐらいの実力通りの結果とも言える。
だけど、そこに至る二転三転のドラマに筋書きなど存在しないし、
終結果たる決勝の得点は完全なる異次元だった。

この前人未到の真っ黒トリックリスト(「こんな暗い道歩けないよ」byMCのノブさん)を完全制覇!!

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Into the Darkness,into the 異次元

www.youtube.com

Glokenじゃなく、Lotus Kendamaが上位3人の決勝動画をアップしてくれている…
仕事早い。Lotusのyoutube元から好きだったけど更に好きになった。

改めて観るとどのトリックもゾッとするほどクリーン。スーパークリーン。
11-5以外はほとんど体勢が崩れない。
足がずっと開始位置のままなんよ…
決勝に残った全員ほとんどそうなんだけど。

特に上位4人がエグかった。体幹?センス?コーディネーション能力?*1
全部必要なんだろうけど、下手なりにクリーンなメイクを目指すことって
改めて大事なんじゃないか、それこそが上達の近道だったりするのかもしれない、
なんてことを思った。
参考にするのも恐れ多すぎるレベルではあるけれど。

大会終了後、彼がインスタグラムのストーリーズでシェアしてた中に最高に彼らしいコメントがあった。

本来残らないストーリーズの内容をアップするのは、
あんまりよくないことかもしれないけどこれだけは許して欲しい。

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泣いてまうやないかい。

マテオの死後すぐ開催されたCatch&Flow2019決勝2回目のRUNを思い出した。

youtu.be

DWIのコゾロフさんがバックでずっと泣いてるw

ここで改めて優勝したヤスくんが2019年に受けたKendertainmentのShotgun interviewを観てみよう。

www.youtube.com

Q:When did you start playing?

A:I started playing kendama towards the end of elementary school.
I've been playing for 4 years now.

Q:Do you play everyday?

A:I play one hour every day.

Q:Current favorite trick

A:I really like Liad's level 12 trick. I do that one a lot.

Q:How it feel standing on the stage during KWC 2019?

A:At first during practice I was told to stand on stage,
at that time no one was there but it was exciting.
Even when I was conpeating it was exciting
it was so fun being on that stage.
I had a good amount of confidence.
I knew that being on that stage was fun.
so after that my confidence went up.

Q:Lighthouse or Lunar

A:Lunar.

Q:Taps or Instas

A:Instas.

Q:Paint or Natty tamas

A:I like painted tamas.

Q:Your dad is a drummer in a band. Do you want to play music too?

A:Not in a band but I kind of wanna be a rapper or… I want to do something with music.

Q:Is there a trick to juggling?

A:The position of the base cup when you juggle should be the same.
When you do that connecting 2 or 3 juggles is a lot easier.
So you can do multiple juggles better.
Juggling is  hard so I really recomend this technique.

Q:Do you belong to any school clubs?

A:There's a "Old Toys" club where I can play kendama.
There I play a lot of "old games".

動画では日本語で回答してるので英語めんどくさい人は動画をどうぞ。
父ちゃんスキンズのドラマーで息子がラッパーでけん玉世界チャンプってめちゃオモロい。
見事な有言実行を一つ果たしたばかりなので本当にラッパーになる可能性は普通に高そうだ…
とは言えまだまだけん玉で頑張って欲しいけど。

そして絶対に忘れちゃいけない映像がZOOMADANKEがプロデュースしたコレ。
YOUNG JAPANESE KENDAMA SLAYERS "YASU and SHINNOSUKE"
一番衝撃を受けたのはここ。

youtu.be

始めたのが6歳の時だから幼稚園の年長か小1として、
この動画、どう見てもその当時の背丈だと思うんだが…

普通にず~まだんけをコピーしとる。

こんなフロー…僕普通に今でもできません。
ライバルのシンノスケくんは今回は残念な結果だった。
インスタだといつもエグいトリックをバシバシ決めてニコニコしてるイメージだったので、
やっぱり本番の緊張感ってオンラインとは言え全然違うんだろうな。
CATCH&FLOWでの復活を期待!

しかし日本のけん玉シーンをリードするトッププレイヤーの二人がロン毛とモヒカンの小学生って素敵。

ヤスくんにあこがれた金髪ロン毛のモヒカンちびっ子がいっぱいけん玉やってる日本、みたいな世界線に出会えたら最高すぎる。

今大会での彼のプレイ、あの決勝のRUNを観たらけん玉キッズはみんなあこがれると思う。
そして口うるさいおかんも彼の常に仲間への気遣いと感謝を忘れないあのキャラクターを知ったら子どもがモヒカンにしてもつい許しちゃいそうだ。

 

そして前年チャンプ、タクヤくんも凄かった。
彼が用意したトリックリストはなんと27個!!フルマーク時の得点は2281点!
あえて縦長のリストで貼っとくのでじっくり見てみてください。

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一人だけコンセプトが「スピード競技」になってるんですけど…!
綱渡りでダッシュするようなもんだよ…

本番で彼はこの長大なトリックリストを一度も目で確認していない。
14個だけとは言えヤスくんもそうだった。

完全にこのリストを決勝用に練習し続けて、体に浸み込ませてきた証。
二人とも今年のKWCで優勝する為に2000点を超えるトリックリストが必要だと判断し、習練していた。
何度も見直してそのことに気づいた瞬間に改めて天才二人の努力の分厚さを思い知った。

何なら二人とも練習ではこれ以上の点数をクリアしている可能性は非常に高い。
最後の最後まで最高に盛り上がったのはこの二つの超絶トリックリストを準備し、
習練を積んでいた二人の努力があってこそ。

チャンピオンとしての攻めの姿勢に感動した、みたいな声があったけど、
本当にその通り。素晴らしかった。それしか言えんわ。

正直二人とも常人に測れるような才能ではないので、
即興で準決勝の点数から決勝で必要なトリックリストを計算し、
修正していた可能性ももちろんある。それはそれでめっちゃシビれる。
Glokenさん、優勝者1万字インタビューとかして欲しい。2万字でもいい。
吉田豪かよ。すいません。

 

あと忘れちゃいけない2位3位の二人。

2位のマハルくんはかつてKWCの決勝で得点ゼロだった悔しい経験もあった。
毎年着実に順位を上げて今年2位。
本番でも練習通り落ち着いてやることを心がけた、
ってコメントが人柄出てて本当によかった。

決勝でブザービーター決めた時に司会の二人が騒ぎ過ぎてデスクがひっくり返ったシーンは今大会のハイライトの一つ。
爆笑しながら感動する、という人生でなかなかできない経験をさせてもらった。
ブザービーターというのは、終了時間前にトリックの初動に入っていたら時間過ぎた後に決めても有効、という今大会から導入された新ルール。
これ、間違いなくエンターテインメント性とドラマ性を格段にブチ上げる神ルール変更!
やる側も観る側もどちらもWINWINです。最後までハラハラしっぱなし!
マハルくんと同じドリけん所属で決勝6位だったイッキくんもブザービーター決めてたけど、二人のこのシーンは語り草になりそう。

そして3位のTiblex!KING OF TAP!
オンラインでなければ参加できなかった、と本人が言ってたのでもしかしたら最初で最後のKWC参加?!
glokenさん、来年なんとか招待してあげて!
クラファンとテレビの人へのロビー活動頑張って!
あとテレビの人!ぬるいバラエティの隙間埋める為だけにけん玉を便利に使ってる場合じゃないよ!
けん玉ワールドカップの決勝を地上波で放送しないと毎晩枕元に立っちゃうぞ!
それかterteleac家のパパさん、ママさん、かわいい子には旅を!

ただの妄想レベルの話だけど、彼が普段から日本のトップレベルのプレイヤーたちと交流していたら、たぶんお互い凄いことになってるよね、きっと。

インスタで見てた通りのナイスガイやった。

一つだけ残念だったのは本番で10タップジャグが見れなかったことぐらいかなー。*2
基本は8タップを繰り返して数を増やすだけ的なことを本人が言ってたので、6でも10でもキリ悪いんだから10でも良いのに、なんて思うのは無責任なファン心理。

また来年も観たいプレーヤーなのは間違いない。きっと世界中のファンも待ってる。

 

と、ここまでひたすら良かったことばかり書いてきたけど、
やはり気になるのは外国勢や過去の有力選手の不参加

SweetsJoshua GloveParker Johnson以外誰か出てた?
ニックザックギャラガー兄弟もBryson Lee金田 奏過去の優勝者全員出てない!

KROMはボンズジェイクが出てるし、優勝者がヤスくんだから問題なさそうに見えて、
シグネチャーモデルが発売したばかりのみんな大好きYUAちゃんYUIちゃんが出ていない。
なんかミニゲームには出てたけど…

SOLは5人出てたけど前年7位のLiam Rauterは出てない。
一番見たかったMicah Seguraも出てない。…彼は所属はしてないんだっけ?
新加入のNOWAちゃんは明るい笑顔でとてもよかったけど。

Grain Theoryはアベンティス以外誰も出てない…

そしてKendama USA!
誰も出てへんやないの!!
WyattJosh Kimが抜けたのも気になってたけど、
乗岡信吉や2019年チャンプの空 瑠以も出てない。

どしたん?さすがに気配なさすぎて心配。

マイ推しのOkendamaは一人ロシアの人(DMITRY KUZMIN)が出てたな。
ロシアでけん玉スクールやってるらしい。
ロシアの人全部で6人いたけど、他はインスタのアカウント見つけられず。
実はみんなそれぞれどこかに所属してたりするんだろうか。

数字でも見てみよう。外国人選手の推移をグラフにするとこうなる。 

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見事なまでの右肩下がり。ついに今年10%を切ってしまった。
全体の参加人数が増え続けるのと反比例して減り続けている。
本来ならオンラインで増えていてもおかしくないのに…

また、歴代優勝者で今回参加していたのはボンズタクヤくんだけ…
歴代のトップ10入賞者で参加していたのも10人程度。

なぜなんだぜ…ちょっと理由を考えてみた。

・賞金額の低下

・ジャグ/フリップ/風車偏重の傾向への反発
実際Matt SweetsはCATCH&FLOW2020の時に高難度でも、よく見る回転系の技に辛口だったような記憶が。

・手続きやルールの複雑化による言語の障壁

・キッズプレーヤーの台頭

・受験
キッズ世代特有の理由だけど、結構聞く話。

・思春期(わりとマジメな話)
これもキッズ世代の話だけど、ただ楽しかった時期が終わり、
異性も気になり始め、視野も広がりファッションやら恋愛やら将来やらも気になってくると急に冷めちゃう瞬間とかあんのかな…

などなど好き勝手な推測はできるけど、
そもそもけん玉はプロスポーツではないので、
いわゆる「コンペティターとしてのモチベーション」を継続しづらいのかもしれない。

プロスケーターやプロスノーボーダーが何十億と稼いでいるように、
ロールモデルとして憧れられるぐらい稼ぐプレーヤーが出てきたら何か変わるんだろうか?

もちろん金だけではないのは承知の上だ。
けん玉の楽しさはもっとシンプルで本質的なものだ。
競技として成立はするけど、基本的に戦う相手は常に自分。
故にそれを乗り越える喜びは誰もが持ち得る。
それは身をもって僕自身が知っている。

でもお金の問題はプロスポーツになるには絶対乗り越えないといけない壁ではある。

銭は可能性へのキップズラ!!(©ジョージ秋山

でもコレってニワトリたまごな問題。
市場規模が大きくなるから稼げるプレーヤーが出てくるし、
稼げるプレーヤーがいるから市場規模も大きくなっていくし…

なんにせよ、一ファンとしてできることは
地道にけん玉を広めていくこと、しかないのだなぁ…無力だ。

 

なんかちょっと気持ちが落ちてきたので最後に明るい話題を。

個人的KWC2021ハイライトの一つ、コマ回し世界一のカンタくんのコマテオ!

 
 
 
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余った制限時間内にコマでマテオチャンス、しかも最後はけん先にコマ!
めちゃくちゃ盛り上がったし笑わせてもらった。
後でプロフィール見たら仏像とみうらじゅんも好き、と書いてあるのを発見し二度ほっこり。
見どころあり過ぎる若者…
いつかMJと一緒にタモリ倶楽部に出演希望。

他にもA.I.ZAWA(のおっ)さんTシャツ6%オフ*3とかフジソウの11ジャグとか*4次々とニューフェイスを決勝に送り込んでくるSulabドリけんの育成のすごみとか、いろいろ見どころの多い大会だった。

来年こそは廿日市!…なんでしょうか。

個人的にTiblexの件や海外選手、有力選手の参加減少は世界大会としてのKWCのあり方、みたいなものを考えずにはおれないしこりが残りました。

決勝10人だけは廿日市特設ステージで地上波生放送ってのが今自分が思う夢のケーダブッシー(©️kanta_spintop)だ。

 

過去最長の文章を書き散らかしてしまった…

6000字越え…

また来年!の前に次はCATCH&FLOW!

ああー!無性にけん玉がしたくてたまらーん!

*1:自分の体を巧みに動かす能力のこと。要するに運動神経?一般に幼少期~12歳ぐらいまでに最も成長する能力と言われてます。

*2:タクヤくんはリストに入れてたけど残念ながらそこまで辿り着けず

*3:海外の人が送料で断念した話、最高なのでDWIラジオ聴きましょう。

*4:彼の底抜けに陽気なキャラクターのおかげでこんな笑い話ですんでいたけど…ボンズの9インスタの件も含めてルールと言うか今後はこんなメイクはダメだ集みたいな参考資料を用意するとか、何らかのリスクヘッジは必要かも。個人的にはルール上アリではあるけど裏トンボ返りとトンボ返りの方が10ジャグと11ジャグより別の技感あります。図らずも回数こなす技は10回越えても別の技認識、という説が立証されてる感もありますが…注釈長すぎ!